ロシア文学って登場人物の名前がとてつもなく長いし、誰が誰だかさっぱりわからなくて、途中でわからなくなるんだよね。どうしたらいいのかな?
ロシア文学の登場人物はロシア人の名前の法則をおさえてないと誰が誰だかわからなくなるよ!なぜなら各人が様々な名前を持っていて、同じ人物でも呼ばれ方が変化するから。まずはロシア人の名前の法則を覚えよう。
これまでロシア人の名前の法則を別記事で詳しく説明してきました。このすべてを理解しないと、日本語訳であってもロシア文学を読むのは非常に難しいです。なぜならば、同じ人物でも呼ばれ方が変化するからです。
今回は、これまで解説してきたロシア人の名前の法則をロシア文学の最高峰ドストエフスキー作品の登場人物に当てはめて、体系的に理解できるようにまとめました。
ロシア人の名前の基本をおさらい
まずはじめに、改めてロシア人の名前の基本をおさらいしておきましょう。
ロシア人の名前の仕組みを覚える
○○家(姓)の××の息子/娘(父称)の△△(名前)という仕組みになっているのです。さらに、非公式な「愛称」という名前もあります。
ロシア語の場合は、固有名詞でも男性名詞および女性名詞の区別がありますが、その見分け方は非常にシンプルです。基本的には、男性名詞は最後の音が「子音」、女性名詞は最後の音が「a」です。
『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』の登場人物であるアーリャさんの本名は、アリサ・ミハイロヴナ・九条(Алиса Михайловна Куджо)ですが、同じように3要素で構成されています。(※姓は日本人の姓なので無変化)
呼び方で距離感を把握する
各構成要素ごとの解説はこちらでご確認ください。
「カラマーゾフの兄弟」で名前の仕組みを復習しよう
さっそく、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の名前を見て、ロシア人の名前の仕組みを復習してみましょう。
わかりやすく「父称」は、父フョードルの名前を受け継いで、3兄弟全員がフョードロヴィチです。さらに、それぞれに作中で呼ばれる「名前」「愛称」があります。
父 | 長男 | 次男 | 三男 | |
名前 | Фёдор フョードル | Дмитрий ドミトリー | Иван イヴァン | Алексей アレクセイ |
父称 | Павлович パブロヴィチ | Фёдорович フョードロヴィチ | Фёдорович フョードロヴィチ | Фёдорович フョードロヴィチ |
姓 | Карамазов カラマーゾフ | Карамазов カラマーゾフ | Карамазов カラマーゾフ | Карамазов カラマーゾフ |
愛称 | (本作では記載なし) | Митя ミーチャ | Ваня ワーニャ | Алёша アリョーシャ |
さて、もしこの兄弟に姉妹がいたらどうなるでしょうか?「父称」と「姓」は、ルールに則って決まりますので、簡単に予想ができます。
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| 父 | 長女(架空の人物) |
名前 | Фёдор フョードル | ー |
父称 | Павлович パブロヴィチ | Фёдоровна フョードロヴナ |
姓 | Карамазов カラマーゾフ | Карамазова カラマーゾワ |
愛称 | (本作では記載なし) | ー |
「罪と罰」で呼びかけ方や人物間の距離を復習しよう
ドストエフスキーの『罪と罰』の主人公を例に、呼びかけ方や人物間の距離を復習してみましょう。まずはじめに、主人公ラスコーリニコフのフルネームと愛称を書いてみます。
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| 主人公 |
名前 | Родион ロジオン |
父称 | Романович ロマーノヴィチ |
姓 | Раскольников ラスコーリニコフ |
愛称 | Родя ロージャ Роденька ※ ロージェンカ |
※「指小形」と呼ばれる、愛称の中でもさらに親しみを込めた表現。子供に対してや恋人に対して使うことが多いそうです。
登場人物や作者(地の文)はこの主人公をどう呼ぶことが多いかをまとめてみると以下のとおりとなります。必ずこの通りではありませんが、なんとなく感覚がわかっていただけるかと思います。
主人公との関係 | 親子 | 友人 | 主人公より目下 | 作者(地の文) |
主人公の呼び方 | Роденька ロージェンカ | Родя ロージャ | Родион Романович ロジオン・ロマーノヴィチ | Раскольников ラスコーリニコフ |
主人公との距離 | かなり近い | 近い | 遠い | (地の文での形式的な呼び方) |
まとめ
ロシア人の名前は必ず「名前+父称+姓(苗字)」の3要素で構成され、さらに「愛称」という呼び方もあります。
これらを理解していないと、ロシア文学が意味不明すぎてまったく読めません。なぜなら、一人の登場人物に対して、呼び方が何種類もあり、誰が誰だかさっぱりわからなくなるからです。
名前の仕組みと人物間の距離感がなんとなくわかるようになれば、もっとロシア文学を楽しめます。微力ながら、読者のみなさまの理解促進にお力添えできていることを祈ります。
今回はドストエフスキー作品の登場人物について取り上げてみました。
かなり有名な作品ですので、原作小説に興味がある方もいらっしゃるかと思います。ただし、日本語訳であってもあまりにも話が長くて複雑すぎるのでおすすめしにくいのが本音です。
まずは、漫画でその世界観を味わってみませんか?